1996年にフジテレビで放送された『白線流し』は、高校卒業を控えた高校生たちの青春の葛藤や苦悩を丁寧に描いた名作ドラマ。
本編放送後もスペシャル版がいくつか放送されており、当時の人気がうかがえますよね。
私はリアルタイムでは観れませんでしたが、ちょうど高校の時にレンタルしてはじめて視聴。
まさに登場人物たちと同じ高校生だったこともあり、登場人物たちの心情がすごくリアルに感じられたことを今でも覚えています!
皆さんの中にも、当時から20年以上経った今でも心に残るシーンがある方も多いのではないでしょうか。
今回は、この作品のキャストや音楽、個人的に印象深かった場面を中心に振り返っていきます。
『白線流し』ってどんなドラマ?
『白線流し』は、長野県・松本市の松本北高校を舞台に、高校生たちの恋愛や友情を中心に描かれた青春群像劇です。
主人公・七倉園子(酒井美紀)は、いまだ将来の目標が定まらず進路を決められないでいる高校3年生。
ある日、園子は学校の机に星座らしき点模様を見つけます。
その模様は、同じ高校の定時制に通う大河内 渉(長瀬智也)が書いたものであり、これをきっかけに渉との交流がはじまります。
実際の高校生活のような何気ない日常描写も多いため、自然と落ち着いて物語に入っていくことができるストーリーだと感じました。
ただ、世間からみた定時制生徒の印象や、渉が働く会社内での軋轢など社会の黒い部分も描いているため、現実的な側面もあるドラマという印象です。
キャストと登場人物
『白線流し』は主演の酒井美紀さん、長瀬智也さんを中心に、当時の若手キャストを中心に描かれました。
・大河内 渉(長瀬智也)
松本北高校の定時制に通う高校生。将来は天文台に就職することを目標としている。どこか人と距離を取りがちな性格。
・七倉 園子(酒井美紀)
松本北高校3年。将来の明確な進路を決めかねている。やさしく友達思い。
・飯野 まどか(京野ことみ)
松本北高校3年。後述する慎二の彼女。(物語序盤では)将来は上京したいと思っている。楽天的で少々ミーハー。
・富山 慎司(中村竜)
松本北高校3年。まどかの彼氏。勉強は苦手だが、明るいムードメーカー。
・長谷部 優介(柏原崇)
松本北高校3年。真面目で成績は学年トップクラス。園子に想いを寄せる。
・橘 冬美(馬渕英里何)
松本北高校3年。現実的な性格。素直じゃない一面もあるが、しっかり者。
この6人を中心として、青春期の悩み、尊さ、葛藤もリアルに描き出しました。
主題歌・スピッツ「空も飛べるはず」とBGMによる繊細な演出
主題歌はスピッツの「空も飛べるはず」。
キャッチーなメロディと青春が感じられつつも退廃的な歌詞が、ドラマのストーリーと絶妙にマッチしていますよね。
学生時代に合唱で歌った方も多いのではないでしょうか。
また、ドラマの随所にながれるBGMは、その緩急のある旋律が登場人物たちの心の揺れを表現しているようでとても印象的。
彼らの感情や、のどかな松本の風景を引き立てる作りになっており、繊細な演出が魅力でした。
私的に心に残る名シーン
『白線流し』は、日常生活の中の小さなドラマが描かれていますが、私的に特に印象的だったシーンをいくつかご紹介します。
<第3話>
ある日天文台に星を見に行った、全日の5人。
園子はその天文台で、偶然渉に会う。
二人で会話する中で渉は、「全日制の生徒は太陽のような存在。自分たち定時制は、周りをただ回っている惑星みたいなものだ。」と園子に言い放つ。
それに対し、園子は「私には(将来の目標などが)何もない、太陽なんかではないです…」と伝える。(白線流し<第3話>より。セリフは一部編集)
ここは、渉と園子って心の奥の方は似ているのかなと思ったシーンでした。
渉はこのセリフからもわかるように、どこか斜に構えていて卑屈なところがある。
園子もまた、自分には目標ややりたいこともなく、太陽のような存在ではない、と自分を卑下しているよう。
お互いの(よく言えば)控えめな部分、そしてそんな相手の力になりたいという気持ちなどが、その後のふたりの関係性を作っていったのかなと思いました。
<第10話>※微妙に結末に触れます
大学の試験当日、園子は途中の道端で苦しむ妊婦を助け、受験を台無しにします。
その後、渉と会った園子は「実は助けたというより、ただ試験から逃げる理由が欲しかっただけ。皆には頑張れというくせに、自分は何もできていない…」と涙を流す。
そんな園子に渉は「(園子と)出会ったことで、くすぶっていた自分を変えてくれた。知らない間に、皆に手を差し伸べている。お前は太陽みたいだよ」と告げます。(白線流し<第10話>より。セリフは一部編集)
園子の気持ち、分からんではないな…と感じました。
人間てどこか弱い面があって、自信がない時ややる気が起きない時って自ら理由を見つけにいってしまうもの。
でもそんな自分を認めて、人に伝えられる園子はある意味強いのだと思います。
その“静かな強さ”が園子の魅力でもあり、そんな園子に渉も惹かれ、勇気づけられたのかなと感じられました。
<最終話>※結末に触れます
卒業式も終わり、園子はそれぞれの夢へ向かって旅立つ友人らを見送った後、3年の担任教師と教室で話しています。
園子は先生に「前へ進む皆をみていて、だれかの夢を応援できるような仕事がしたいと気づいた」と告げ、教師になりたいと思っていることを伝えます。
担任は「学生時代は何を学んだかより、いかに学んだかが大切。ここで得られたものは公式ばかりじゃなかったわよね。」と伝えます。
これからの進むべき道を見出した園子は、松本の風景をバックに一歩一歩とあゆみを進めるのでした。(白線流し<最終話>より。セリフは一部編集)
これまでのストーリーでどこか自信なさげだった園子が、新たな第一歩を踏み出すシーン。
こんな風に、日常のなかでふとした時に、自分の気持ちや本当にやりたかったことに気づくことってありますよね。
そして学校って勉強だけじゃなくて、人間関係や皆と一つになって目標に向かって取り組むこと、自分には何ができるか…など考えることがたくさんありました。
個人的には、園子が無事合格しました、チャンチャン。で終わらなかったのが、なんか好きです。
自分の弱さで受験を台無しにしたという少し後ろ向きな面もありながら、でも最後は進むべき道を見つけた園子。
この人間味のある絶妙な終わり方が、“人生こういうこともあるよね”と言ってくれているような気もします。
現役合格はダメになったけど、でもきっと園子はそれ以上のたくさんのモノを得られたはず。
『白線流し』のここが特におすすめ
・青春の日常を丁寧に描き、共感しやすいストーリー
・友情、恋愛、社会・会社内での軋轢など、多面的な人間関係をリアルに表現
・松本の自然美、素朴な音楽、登場人物たちの描写が見事にマッチしている
静かに、でもたしかに記憶に残るドラマ
『白線流し』は、単なる青春恋愛ドラマではなく、青春の尊さと苦悩、真の友情とは何かなどさまざまなことを考えさせられる作品。
放送から20年以上経った今、改めて観返してみると、大事件は起こらないのですが何気ない日常を丁寧にすくい取っていて、あぁこんな時期もあったな…と少ししみじみしてしまいました。
ノスタルジックな気分に浸りたいときはまさにコレ! ですね。
さて、みなさんの『白線流し』のお気に入りポイントはどこでしたか?
その他の青春ドラマをまとめた記事はこちら⇒【青春って素敵! 平成の群像劇ドラマ5選】
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